昭和館

2008年2月2日訪問

 地下鉄九段下の4番出口から地上に出ると、そこには「昭和館」が立っている。
 パンフレットによると、1999年に開館した国立の施設で、厚生労働省から委託されて日本遺族会が運営している。
 戦中・戦後の国民生活に関わる展示をして後世代にその労苦を伝える、というのが趣旨である。
 7階6階が有料の常設展示室。
 5階が映像・音響室、4階が図書室と研究・学習にも利用できる。
 3階の研修室、2階の広場ではイベントや交流が可能。
 1階が入り口で総合案内所になっている。
 「昭和」という時代のくくりは昨今、戦後の経済成長期の代名詞のように乱用されているきらいがあるが、戦中・戦後の国民生活をとりあげて「昭和」と名付けるのは、それに比べればまだうなずける。
 展示は、実物や写真などの資料が豊富で、音声ガイドもあり、くわしくてわかりやすい。

  

 ブースごとに「小学生のためのテーマ解説」シートが置かれ、学習資料として自由に持ち帰ることができる。
 内容は展示資料や時代背景の説明や写真、語句の解説、「学習のヒント」などである。
 「学習のヒント」は、たとえば第1ブースでは「母親(女性)は、家の仕事でどんな苦労をしましたか。」というふうに問いかけの形式になり、それに答えようとすることで学習を深められるようになっている。

  

 「体験ひろば」という、実物を触ったり着たりできるコーナーは、土日にはガイドボランティアが詰めている。

  

 昭和館では、すぐ近くにある遊就館ではほとんどふれられない戦時下の人びとの生活がよく学べる。
 しかし、戦争そのものへの言及はない。
 あの時代の人びとの「労苦」はなぜあったのか、それはだれのせいなのかを考えさせる材料は、ここにはない。
 過去の事実から反省的な学びをし、これからの平和形成に生かすのが平和博物館の使命であるとするならば、「昭和館」は平和博物館とは呼びがたい。
 しかし、ここの展示から、戦争が人びとの暮らしをいかに破壊するかをしっかり学び、それはいやだ、という思いは持てる。
 その思いを持ちながら戦争に至る歴史をきちんと学習する中で、平和への思いは育てられるのではないか。
 教える側がきちんと計画してこの館を利用するならば、平和教育の場として有効な活用ができるだろう。


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